歴史11~

   第11章 ペットボトルとの格闘

 エコチャンバラの主要部品は、ペットボトルです。ペットボトルの材質のペット(PET:ポリエチレンテレフタレート)は「燃やせるプラスティック」として開発されました。まちによってペットボトルを「資源ゴミ」「燃やせるごみ」「燃やせないごみ」としての扱いがまちまちのようです。
 実際に工作の中で、はんだごてでペットボトルに穴をあけることがありますが、キャップ(プラスティック)を試しに溶かしてみたときは、有害のガスが出て、しばらく咳き込んでしまいました。が、ペットボトル本体を溶かしてもほとんど気になりません。
 このペットボトルの特性をよく理解しながら利用するのが、エコチャンバラ工作の基本です。

 エコチャンバラを創始した頃、はてどの程度ペットボトルとは丈夫なのだろうと思い、コンクリート柱におもいっきり叩きつけました。すると、底を切っていない状態では、へこみもせず、底を切った状態ではへこみましたが、別な角度で叩くともとに戻りました。
 またあるとき、バスを待っていたら、路上にペットボトルが棄てられていました。その上をバスが通りました。どうなるか、と思って見ていたら、ペットボトルの飲み口の部分は細かく砕けましたが、その下の本体の部分はぺしゃんこになっただけでした。
 ゴリラが叩いたところで、バスに踏まれるほどの衝撃はないはず。人間の力では、普通、ペットボトルは割れない、と判断しました。

 一方では、石油製品は気温によって性質が左右されます。ドライアイスで凍らせたペットボトルや、飲み残しによる菌の繁殖によるペットボトルの破裂事故がニュースになったこともあります。必ずしも安全ではないことも念頭におかねばなりません。特に気になったのは、エコチャンバラの最初の越冬でした。真冬のイベントのリクエストが、スタッフのひとりである加来さんのところに舞い込んだのでした。冬の北海道は、当たり前ですが、かなり寒い状態です。屋外に保管したペットボトルは下手するとマイナス20度近い気温にさらされます。
 ただ、日中は気温はせいぜいマイナス5~6度くらいなので、イベントをやっている時間帯にはペットボトルの温度は上がります。実際、冬のイベントでペットボトルを打ち合っても、まだ破れたことはありません。ただし、経年劣化の恐れもあります。
 この点、エコチャンバラで使用するエコ武器は、イベントに使うと、さほど長持ちしないという特性(?)がプラスに働きました。数百回も強い打撃を受けると、ペットボトルはよれよれになって、ビニールテープでは接合できなくなるのです。もちろん、取り替えてもコストはさほどかかりません。ビニールテープ代くらいのものです。

 気をつけなばらないのは、ペットボトルの材質は、飲料によって異なるという点です。四角胴ボトルでは相当薄いものもあります。が、炭酸飲料に使われる丸胴の場合、内圧に耐えねばならないので、強めに作られています。余談ですが、ビールのペットボトルが研究されているとのこと、今から楽しみです。(いろいろと)
 こういうものはたぶん、本格的に強度を計算して安全性を確認しなければならないのだろうと思いますが、草の根活動のレベルではそこまでできません。今のところ、経験則の積み重ねです。3年やって、破裂事故はありません。切れ目をいれたものが、その切れ目から破れたことはあります。

 ペットボトルには飲料ごとにいろいろな形があり強度があります。大きく分けると丸胴、四角胴、六角胴です。ひねった形のものなどの、個性的なものもあります。さらに大きさも2リットル、1.5リットル、900ミリ、500ミリなど豊富です。500ミリより小さいものもありますが、用途は要研究。小さいと材質がより固くなるようです。
 たぶん、工作をしたことのない方はご存じないと思いますが、ペットボトルによって、飲み口の内径が違います。大きくは、透明なものと、白いもの。白いもののほうが内径が小さいのです。このため、透明なものに合わせて作った軸が、白いほうに入らないということになります。(水のペットボトルなど、ものによっては独自の径をもっているものもありますが、ここでは2種類だけとあえて限定して話を進めます)
 これは少々不便です。キャップジョイントの手法だけで全部の工作ができればそれほど問題にはならないのですが、軸を口にさしこむ手法だと径が2種類あることは、なかなか大変。
 四角胴はたいてい白い口になっています。炭酸系は透明なものが多いように思えます。
 これまで開発した武器では、丸胴は打撃用に、六角胴は防御用に使うのがいいようです。四角胴は角が固すぎて、以前は全く使い道が考えられませんでしたが、エコ弓矢の開発によって、逆にいくつあっても足りないほど、活用されています。今現在は使い方がない、あるいは使いにくいと思われる形や強度のものも、いずれそれに合ったエコ武器が開発されることで日の目をみることでしょう。

 エコチャンバラ工作をやってから、我が家からはほとんどペットボトルがごみとして出なくなりました。たいていはなにかのエコ武器に変わります。工作に当たっては、セメダインなどの有害ゴミのもとになるようなものは極力使わないでおいて、原則、使えなくなったらばらして資源ごみに出す、というのが正しい処理方法です。


   第12章 エコチャンバラの軸

 エコ武器はペットボトルだけでは作れません。材料としては、軸(剣などの柄にする)やロープなどが必要です。
 軸についても歴史(経緯)があります。
 最初、釧路市内にあるお店で、エコ剣の軸になる棒を選びました。ペットボトルの透明口の内径はおよそ21ミリ。ところが、ちょうど21ミリの棒がなかったので、19ミリの棒を買ってきました。当然、すかすかです。そこをビニールテープで巻いて巻いて、無理矢理内径を合わせたのが最初のエコ剣でした。

 材質にもよるのでしょうが、なるべく安い棒を買ってきたためか、強く打ち続けると、軸が折れることがありました。
 そこで、太い、30ミリくらいの棒を軸にする手段を考えて、キャップそのものを軸にネジで止め、武器本体を接続する、キャップジョイント方式を考え出しました。

 しかしキャップはプラスティック製なので、ゆがんだ状態だと、強打されたときに本体がはずれやすくなることがわかりました。もっとも、本体がはずれやすいのは、一面、相手にダメージを与えないという点では利点でもあります。問題は、エコ剣とエコ剣をぶつけあったときに外れやすいということです。

 現在は、釧路刑務所に軸を発注しています。大変よい材質の木を使っていただいているので、折れることもありません。飲み口の径に合わせた軸を複数発注させていただいています。

 ただ、ご家庭で作るときに、どうしても径のある棒が手に入らないということがあると思います。20~21ミリくらいの径の棒が売られている地域はそれで対応可能だと思います。そうでなければ、太い軸の先端を削るなどの工夫が必要でしょう。

 木の棒ではなく、塩ビの管を軸に使えないかと思って試したことがありました。これも内径がぴったりのがなかなか見つかりませんでした。が、それよりもできることならあまり不要のゴミは出したくないと思い、採用していません。

 さて、内径と共に重要なのが、長さです。
 エコチャンバラは、安全性を重要視します。エコ武器で最も危険な部分は軸なのです。なにせ木ですから。握りの部分で殴られたら、怪我をします。
 そこで、エコ剣では軸の長さをなるべく短くしてきました。大人が片手で握って、軸がはみ出さない程度です。子どもが使うと軸があまることがありますが、これまでは大人用と子供用に分けて作ってこなかったためです。今後は長さを変える必要があると思います。(もっとも、現在のエコサーベル2では、手の覆いが軸よりも長くなるように作っているので、以前よりは安全性は増しています)

 ただ、どんなに安全性を考えても、使い方次第では凶器になります。イベントなどで子どもたちにいきなり自由に遊ばせると、中にはエコ剣を逆に握って、柄の方で相手に(ふざけて)襲いかかる人も出ます。このことがまさに、「ちゃんばらごっこに慣れていない」「他人の痛みをわからない」現代の一部の子ども像を反映していると、私は考えます。
 だからこそ、いきなり無条件に遊ばせるのではなく、武器の使用方法、ルールを最初に伝える必要があります。



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